機能性ナイロン繊維(試作品)

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※本品は製品ではなく試作品となりますのでご了承ください。

機能性ナイロン繊維(試作品)について

弊社の機能性モノマー(アミノ/4級アンモニウム)アルキルメタクリレート、『メタクリレート DMA』『メタクリレート DMC』をナイロン繊維にグラフト重合させた新規材料(図1)の用途探索を開始しました。ナイロン繊維としての特長を維持したまま、機能性メタクリレートポリマー鎖(グラフト鎖)でナイロン繊維が改質されており(図2)、ナイロン繊維の特長に様々な機能の発現が期待できます。 


図1.機能性ナイロン繊維(試作品例)

<ナイロン繊維の特長>
・軽量
・丈夫で摩擦や折り曲げにも強い
・伸びがあり柔らかい

これらの特長を生かして、タイヤコード、ロープ、ネット、ベルトなどの産業用資材、カバン、レイングッズ、ジャケットなどの衣類、カーペット、カーテンなどのインテリア用品、アウトドア用品、スポーツレジャー用品などに使用されています。

<当社機能性モノマー『メタクリレート DMA』『メタクリレート DMC』のグラフト重合により想定される機能
・親水性付与
・帯電防止性付与
・アミノ基付与(酸性化合物の捕捉・吸着)または4級アンモニウム塩付与(アニオン性化合物の捕捉・吸着)
・タンパク質の捕捉・吸着
・金属イオンの捕捉
・吸着
・『メタクリレート DMC』はアニオン交換機能付与


図2.『メタクリレート DMC』をグラフト重合させたナイロン繊維のイメージ

なぜ機能が付与できるのか

繊維状の基材にポリマー鎖を結合させることで、ポリマー由来の機能と基材本来のメリットを組み合わせることができます。(図3



図3.新機能発現のイメージ

グラフト重合とは

グラフトとは園芸用語で「接ぎ木」という意味であり、高分子化学では幹ポリマーに枝ポリマーを接ぎ木することをグラフト重合と呼びます(図4)。
幹ポリマーは基材、枝ポリマーはグラフト鎖とも呼ばれます。基材の良さを生かしながら、グラフト重合により新しい機能を付加することができます。



図4.接ぎ木のイメージ

<本機能性ナイロン繊維の作製方法>
放射線(ガンマ線)を利用して、基材であるナイロン繊維の集合体であるボビンの全体に均一にラジカルを発生させます。その後、専用の大型反応装置を使って、ビニルモノマー溶液(例:メタクリレート DMC)をボビン内部に循環流通させ、重合を進めます。反応条件を最適化しているため、基材であるナイロン繊維の強度を保持しながら、ボビン全体に均一にグラフト鎖を付与できることが特長です。

グラフト重合により、以下のメリットが期待できます。

・回収が容易(水、その他の溶剤に溶解しないため)
・環境中に流出しない(ポリマー鎖が基材に固定化されているため)
・繰り返しの使用が可能(回収が容易のため、再び使用できる)

本機能性ナイロン繊維の想定用途

本機能性ナイロン繊維は様々な形状に加工できます。

ボビン

ボビン

ワインドフィルタ

ワインドカートリッジフィルター

モール=組み紐

組み紐

機能付与により以下のような用途が想定されます。
埃(ほこり)などの異物付着防止
・繊維同士の絡まり防止
・有価物の回収・リサイクル
・分離・精製・濃縮
・不純物の分離・除去

img_metal recovery

希少金属回収

フィルター濾過

分離・精製・回収装置

本機能性ナイロン繊維の特性

本機能性ナイロン繊維のアニオン染料に対する吸着実験結果を以下に示します。
カチオン性のグラフト鎖に対してアニオン染料が強固に結合するため、水洗浄後も繊維の染色が落ちません。


染色実験前染色実験後

ナイロン繊維
(未処理)



機能性ナイロン繊維


<実験方法>
1.ポリカップに100mlのイオン交換水を加え、室温下で攪拌開始した。
2.攪拌下、1%青色染料(Direct Blue 14)水溶液をポリカップ中にスポイトで2滴加えた。
3.ナイロン繊維サンプル(約10cm)をポリカップ中に投入し、10min攪拌した。
4.攪拌停止し、濾紙を用いてナイロン繊維サンプルを固液分離した。
5.4.で回収したサンプルを、100mlイオン水の入ったポリカップに投入し、10min攪拌した。
6.
攪拌停止し、濾紙を用いてナイロン繊維サンプルを固液分離した。

参考①:グラフト重合の反応メカニズム

基材にグラフト鎖を接ぎ木するためには、基材にラジカル(反応活性種=接ぎ木する箇所を作る必要があります。
基材にラジカルを作製するためには薬品、光、プラズマ、放射線(EB・ガンマ線が利用されます。
特に放射線を利用すると、(1)基材の形状や材質の選択の幅が広い、(2)開始剤と呼ばれる薬品や溶媒を使わずにラジカルを作製できるというメリットがあります。
作製したラジカルにラジカル重合性モノマーを接触させ、グラフト鎖(ポリマー鎖)を成長させます(図5)。


図5.グラフト重合の反応メカニズム

参考②:弊社の機能性モノマーについて

弊社の機能性モノマーは以下の通りです。各モノマーの詳細な紹介ページはこちら

商品名化学構造式[化学名]

特長

メタクリレート DMA
[ジメチルアミノエチルメタクリレート]
3級アミノ基(弱塩基)を有する
メタクリレート DMC
[メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド]
4級アンモニウム基(カチオン性基)を有する

なお、『メタクリレート』シリーズは、強酸または強塩基(強アルカリ)によって加水分解を受けます。

※各用途における適性および安全性は、使用者の責任においてご判断ください。

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