炭素繊維用集束剤(サイジング剤)​『ケミチレン』

毛羽が少なく、加工性に優れた炭素繊維が得られ、
高強度で信頼性に優れるCFRPの製造に貢献します

三洋化成の炭素繊維用集束剤(サイジング剤)
『ケミチレン』はここがすごい

1

炭素繊維を改質

ハンドリング性と加工性に優れる高品質な炭素繊維が得られます。

  • 集束性を付与し、取り扱いやすくするとともに、加工工程の損傷から炭素繊維を保護して毛羽の発生を抑制します。
  • 得られた炭素繊維束は柔軟で風合いに優れており、高い加工性(開繊性※やチョップ性)を有しています。
  • マトリックス樹脂の含浸性を向上させます。

    ※開繊性: 母体であるマトリックス樹脂を含浸しやすくするために、炭素繊維束を解いて炭素繊維を広げる開繊工程で薄く均一に広げることができる性質

2

炭素繊維複合材料(CFRP)を改質

  • 繊維長を保持したまま均質に配列しやすく、繊維均質性に優れるCFRPが得られます。
    炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性にも優れており、高い強度を発現します。
  • 糸の起伏を小さくでき、表面平滑性に優れたCFRPが得られます。
  • 耐熱性にも優れています。


3

用途に応じた多彩なラインナップ

用途に応じた多彩なラインナップを有しています。

  • エポキシ樹脂への含侵性に優れた『ケミチレン HP、EP』シリーズ
  • 柔軟性かつチョップ性に優れた『ケミチレン UA』シリーズ
  • 水への分散性が良好でカーボンファイバーから集束剤成分を洗い落とし可能な『ケミチレン WS』シリーズ

炭素繊維用集束剤『ケミチレン』は炭素繊維を束ねて取扱い易くする薬剤です(別名:サイジング剤)。

図 PAN系炭素繊維の製造工程概略

炭素繊維強化プラスチック(CFRP)とは

繊維強化プラスチック(FRP)は、繊維と複合化することで強度を高めたと呼ばれる素材で、強化材の一つが炭素繊維です。炭素繊維にエポキシ樹脂など樹脂を含浸させ、熱をかけて硬化することで、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)になります。

炭素繊維は、強くて軽いことが特長で、重量当たりの強さは鉄の約10倍、変形しにくさも約7倍に達します。また膨張しにくいうえに錆びることがなく、さらに薬品や熱への耐久性、X線の透過性にも優れるなど、さまざまなメリットがあります。

FRPには、ガラス繊維を使用したもの(ガラス繊維強化プラスチック:GFRP)もありますが、炭素繊維はガラス繊維と比べても約2倍の強さと約5倍の変形しにくさを持っています。

こうした特性から、炭素繊維は強さと軽さが求められるさまざまな分野で発展してきました。
日本では、1970年代に釣竿やゴルフクラブのシャフトなどスポーツの分野で活用が始まり、90年代には産業機械や土木建築材など産業用途での本格使用がスタートしました。2000年代以降は、航空機や人工衛星、風力発電の風車など、航空宇宙やエネルギー分野でも金属に代わる素材として急拡大してきました。

炭素繊維用集束剤(サイジング剤)とは

炭素繊維には、ポリアクリロニトリル(PAN)繊維を燃やして炭素の繊維に変えるPAN系と、炭素に近いコールタールなどから繊維をつくるピッチ系があり、現在はPAN系が主流になっています。

炭素繊維自体は、1本数ミクロンの細い繊維から形成されます。紡いだり燃やして炭化したりする際にも、強度を出す工夫はされていますが、単体では切れやすいため、その繊維を数千〜数万本束ねた「トウ」と呼ばれる太い糸にする必要があります。その際に使用し、1本1本の炭素繊維をつなぐ役割を果たすのが炭素繊維用集束剤(サイジング剤)です。

炭素繊維用集束剤には、まず「トウ」をしっかり束ねて、糸切れによる毛羽を抑制する働きが求められます。そのうえで加工する際に必要な柔軟性も持たせなければなりません。三洋化成の『ケミチレン』はこれら相反する特長を併せ持ち、炭素繊維の取り扱い性を改善する能力に優れています。また「トウ」に加工した後、CFRPとして含浸させる樹脂とうまく混ざり合うなど、炭素繊維の強さと変形しにくさをより引き出すように設計されています。

炭素繊維用集束剤(サイジング剤)『ケミチレン』は
様々な炭素繊維複合材料製品に使用されています。

炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の用途例

1

圧力容器

サイジングした炭素繊維を使用し、フィラメントワインディングにより成形。

2

風車部材

サイジングした炭素繊維を使用し、プルトルージョンにより成形。

3

X線診断装置用天板

サイジングした炭素繊維をプリプレグとし、金型プレス成形。

4

航空機部材

サイジングした炭素繊維をプリプレグとし、オートクレーブ成形。

5

自動車用部材

サイジングした炭素繊維を織物とし、RTM工法(予備成形後に硬化)、VaBagにより成形。

6

パソコン筐体

サイジングした炭素繊維を、チョップファイバーとしてペレット化した後、射出成形。

リサイクル炭素繊維(rCF)の表面改質剤としての活用

リサイクル炭素繊維は、CFRPの端材から樹脂を分解して再生処理を行いますが、マトリックス樹脂をすべて除去されると集束性の無いフワフワした繊維となるため取扱性が低下し、毛羽や粉塵が舞い上がる等の問題も生じやすくなります。

このようなリサイクル炭素繊維に対しても、『ケミチレン』を塗布することにより、炭素繊維の表面を改質し、作業性を向上させることが可能となります。さらに、樹脂とリサイクル炭素繊維の密着性向上、CFRPの機械物性向上も期待できます。

炭素繊維集束剤『ケミチレン』シリーズ各グレードの特長

特長効果
ケミチレン HP・EP シリーズ
(ポリエステル/エポキシタイプ)
エポキシ樹脂への含浸性に優れる。エポキシ樹脂に良く濡れ、高強度のFRPができる​。
開繊性に優れる​。幅が広く、厚みの薄いトウができる​。
毛羽発生が少ない​。繊維長を維持でき、高強度のFRPができる​。
ケミチレン UAシリーズ
(ポリウレタンタイプ)
柔軟性かつチョップ性に優れる​。柔軟で取扱い易い、かつチョップし易いトウができる​。
EP・HPシリーズとの混合安定性に優れる​。混合により好みの物性に調整できる​。
ケミチレン WSシリーズ
(ポリエーテルタイプ)
水への分散性が良好​。炭素繊維表面に集束剤成分を残したくない場合において、水で洗い落とすことが可能。

『ケミチレン EP・HP』シリーズ(ポリエステル/エポキシタイプ)

図. エポキシ樹脂含浸後 炭素繊維複合材料
断面のSEM写真(800倍)

<特長>
・エポキシ樹脂含浸性に優れる
・集束性及び開繊性に優れる
・毛羽発生が少ない

<概略組成>
特殊ポリエステル
ビスフェノールA型エポキシ樹脂
ノニオン活性剤

一般的な集束剤とケミチレン EP・HPシリーズの性能比較
項目一般的な炭素繊維集束剤
(主成分:
エポキシ樹脂)
ケミチレン
EP-10
ケミチレン
HP-10
付着量 wt%1.51.51.5
CFトウ基本性能毛羽量 ㎎2.90.70.5
集束性 ㎝13.418.617.1
開繊性 ㎜6.56.77.4
エポキシ樹脂
含侵性 s
18.56.95.7
エマルション安定性経時安定性
25℃×6months

『ケミチレン UA』シリーズ(ポリウレタンタイプ)

図 ケミチレン UAシリーズ

<特長>
・適度な柔軟性を有する
・チョップ性に優れる
・ケミチレン EP・HPシリーズとの混合安定性に優れるため、
混合により集束性及び開繊性の調整が可能

<概略組成>
特殊ポリウレタン

一般的な炭素繊維集束剤と『ケミチレン UA-40』の性能比較
項目 一般的な炭素繊維集束剤 ケミチレン UA-40
付着量 wt% 1.5 1.0
集束性 ㎝ 13.4 18.3
チョップ性
『ケミチレン EP』シリーズと『ケミチレン UA』シリーズの混合データ

図 ケミチレン EP-10/UA-30混合による性能調整例​

『ケミチレン UA』シリーズは、『ケミチレン EP・HP』シリーズとの混合安定性に優れるため、混合により、炭素繊維の集束性及び開繊性の調整が可能です。

『ケミチレン WS』シリーズ(ポリエーテルタイプ)

<特長>
水溶性タイプであり、水への溶解性に優れる炭素繊維集束剤です。

『ケミチレン WS』シリーズの基本物性
ケミチレン WS-10 ケミチレン WS-20
概略組成 ポリエーテル水溶液 変性ポリエーテル水溶液
濃度% 50 30
粘度(25℃、mPa・s) 3,000 25,000
『ケミチレン WS』シリーズの性能
一般的な炭素繊維集束剤ケミチレン WS-10 ケミチレン WS-20
付着量 wt% 1.51.5 1.5
集束性 ㎝ 13.413.1 23.8
開繊性 ㎜ 6.56.6 6.4

『ケミチレン』シリーズの主要ラインナップ

『ケミチレン』シリーズの性能一覧

*1 ◎:優れる、 ○:良い、 △:普通、 ×:悪い
*2 樹脂純分加熱時に5%熱減量時の温度(N2中、10℃/min昇温)
CFトウ性能 *1耐熱性
集束性タック開繊性毛羽Tg ℃ *2
ケミチレン HP-10300
ケミチレン EP-10310
ケミチレン UA-10270
ケミチレン UA-20250
ケミチレン UA-30270
ケミチレン UA-40230
ケミチレン WS-10×N/A220
ケミチレン WS-20N/A310

『ケミチレン』シリーズの性状一覧

*130℃で45分加熱処理後の残留物の重量%
液状タイプ濃度% *樹脂種 イオン種
ケミチレン HP-10 エマルション40変性ポリエステル ノニオン
ケミチレン EP-10 エマルション40変性ポリエステル ノニオン
ケミチレン UA-10 エマルション39変性ポリウレタン アニオン
ケミチレン UA-20 エマルション38変性ポリウレタン アニオン
ケミチレン UA-30 エマルション40変性ポリウレタン アニオン
ケミチレン UA-40 エマルション35変性ポリウレタン アニオン
ケミチレン WS-10 水溶液50ポリエーテル
ケミチレン WS-20 水溶液50変性ポリエーテル

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