粘着剤入門 (ポリシック、ポリシック UP)

粘着剤とは

粘着剤は、すぐに貼り合わせができ、必要な時に剥がすことができる接着剤の一種である。その利便性から、梱包、エレクトロニクス、光学、自動車、建築建材、医療などさまざまな用途や分野で幅広く利用されています。エレクトロニクス・光学分野や医療分野において、特に高機能性の粘着剤が求められており、中でも軽い力でしなやかに剥がせる再剥離性や、粘着特性の安定性などは重要な機能の一つです。

接着剤と粘着剤の共通点、相違点

粘着剤は広い意味では接着剤に含まれます。接着剤と粘着剤のどちらも物と物の接着が目的という部分では共通ですが、​粘着剤は「被着体への接触前後の状態に変化がなかったり」、「接着後に剝がすことができること」など、接着剤とは異なります。​

粘着剤と接着剤の共通点

 物と物との接着が目的 ⇒ 物体に濡れるために流動性がある 

粘着剤と接着剤の相違点
   
接着剤 粘着剤
物との接触前後の変化物との接触後、液体から固体に状態変化する 物との接触後も状態変化がない
剥がしやすさ剥がれない 剥がすことができる

粘着剤に必要な特性

粘着力 粘着体から対象物を引き剝がすときに要する力
被着体への濡れ性 被着体にしっかりと接触(濡れ)できること(粘性)​
塗布後の流動性 ほとんど流動しないこと(弾性)​
タック 触れた時の粘着性
保持力 接着を維持するためには、接着状態を保持してせん断に耐える
再剥離性 糊残りなくきれいに剥がせる機能
物理的な結合でくっついていることと、接触前後で状態が変化しないことが必要要件となる
外的要因への
依存性が小さいこと
時間、温度、剥離速度などの外的要因による粘接着、剥離特性の変化が小さいこと
温度の場合だと、広い温度領域において粘着剤の硬さが一定となることが好ましい(硬さの指標は貯蔵弾性率(G’))

粘着剤の設計指針 

粘着力、保持力アップの指針

粘着力や保持力を増加させるためには粘着剤の貯蔵弾性率(G’)は高いほうが好ましい。
しかし弾性率が高くなりすぎると、粘着剤として硬くなりすぎて粘性の寄与が低くなり、被着体との界面における粘着性が不足するため、保持力と弾性率にはそのピークが存在する。

再剥離性向上の指針

粘着体と被着体の界面のみで剥離が起こり、のり残りや被着体のダメージがないよう、粘着剤は凝集力が高い方がよく、目的に応じた粘着特性を発揮できるように組成設計される。

粘着剤の用途例

粘着テープが広範囲に使用されているのは、貼り付けるとただちに使える便利なところや、有機溶剤、加熱を必要としない無公害性、安全性、良好な作業性などの長所によります。
また、あらかじめ粘着テープには粘着剤層が数μmのレベルで薄く均一に塗られているため、粘着剤を使う時に問題となる接着剤層の厚さむらができにくい点も長所として挙げられます。下表に粘着剤が応用されている用途分野、用途例をまとめます。

粘着製品の用途分野と用途例
引用元: 梅谷正和『接着』29(4)、p153(1985)
用途分野用途例
包装バーコードラベル、宅配用粘着ラベル、野菜結束テープ、段ボール用テープ
事務用品粘着剤付きメモ用紙、タック紙、セロハン粘着テープ
電気・電子電気絶縁テープ、プリント配線基板用テープ、スプライシングテープ
自動車サイドモール用両面テープ、防振シート用粘着剤、ガラス用粘着剤、塗装用マスキングテープ
医療ばんそうこう、パップ剤、プラスター剤、サージカルテープ
パッチテスト用テープ、皮膚疾患患者用テープ
建築・土木床材固定用粘着テープ、住宅建築用シールテープ、防水テープ、建具用粘着テープ、目地処理テープ
家庭用品台所用テープ・シート、すきまテープ、補習テープ、保護テープ
粘着式ゴミ取りローラー、ゴキブリ取り
表面保護傷・しみ防止フィルム、金型保護フィルム、絞り加工用フィルム、さび止めフィルム
マーキング反射フィルム、メタリックフィルム、路面表示材

粘着剤の種類と各特徴

粘着剤は、一般的にアクリル系、ゴム系、シリコーン系、ウレタン系などがあります。

アクリル系・ゴム系粘着剤

・微粘着か強粘着まで幅広い設計が可能であり、比較的安価なため、最も広く使用されている
・時間・温度・剥離速度などの外的要因への依存性が大きい。

シリコーン系

時間・温度・剥離速度などの外的要因への依存性が比較的小さく、幅広い環境で安定した粘着力が得られる。
・高価
・低分子のシリコーン成分が被着体に移行し汚染の原因となる懸念がある

ウレタン系粘着剤

時間・温度・剥離速度などへの依存性が小さい
・耐油性・耐摩耗性に優れる
・ウレタン基の極性が高いことから、被着体へのぬれ性・接着性に優れる、透湿性が高い、帯電防止性を発現させやすい、 
 ⇒ 特に再剥離性を重視する微粘着系の用途で強みを発揮する。

ウレタン粘着剤における硬さの温度依存性のイメージ

当社粘着剤の仕様形態・組成の分類

下表は当社粘着剤を性状と使用形態・組成で分類したものになります。
当社はポリウレタン樹脂、アクリル樹脂系粘着剤の設計・合成技術を保有しており、双方ともに無溶剤ホットメルト型と溶剤溶液型
を得意としておりますので、種々の用途・ニーズに応じた対応が可能です。

参考文献

  • 三洋化成ニュース No.440
  • 三洋化成ニュース No.509
  • 三洋化成ニュース No.511
  • 当社パフォーマンスケミカル・ケミカルスの機能シリーズ No.3

関連情報・トピックス

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