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ハンドリング性と加工性に優れる高品質な炭素繊維が得られます。
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図 PAN系炭素繊維の製造工程概略
繊維強化プラスチック(FRP)は、繊維と複合化することで強度を高めたと呼ばれる素材で、強化材の一つが炭素繊維です。炭素繊維にエポキシ樹脂など樹脂を含浸させ、熱をかけて硬化することで、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)になります。
炭素繊維は、強くて軽いことが特長で、重量当たりの強さは鉄の約10倍、変形しにくさも約7倍に達します。また膨張しにくいうえに錆びることがなく、さらに薬品や熱への耐久性、X線の透過性にも優れるなど、さまざまなメリットがあります。
FRPには、ガラス繊維を使用したもの(ガラス繊維強化プラスチック:GFRP)もありますが、炭素繊維はガラス繊維と比べても約2倍の強さと約5倍の変形しにくさを持っています。
こうした特性から、炭素繊維は強さと軽さが求められるさまざまな分野で発展してきました。
日本では、1970年代に釣竿やゴルフクラブのシャフトなどスポーツの分野で活用が始まり、90年代には産業機械や土木建築材など産業用途での本格使用がスタートしました。2000年代以降は、航空機や人工衛星、風力発電の風車など、航空宇宙やエネルギー分野でも金属に代わる素材として急拡大してきました。
炭素繊維には、ポリアクリロニトリル(PAN)繊維を燃やして炭素の繊維に変えるPAN系と、炭素に近いコールタールなどから繊維をつくるピッチ系があり、現在はPAN系が主流になっています。
炭素繊維自体は、1本数ミクロンの細い繊維から形成されます。紡いだり燃やして炭化したりする際にも、強度を出す工夫はされていますが、単体では切れやすいため、その繊維を数千〜数万本束ねた「トウ」と呼ばれる太い糸にする必要があります。その際に使用し、1本1本の炭素繊維をつなぐ役割を果たすのが炭素繊維用集束剤(サイジング剤)です。
炭素繊維用集束剤には、まず「トウ」をしっかり束ねて、糸切れによる毛羽を抑制する働きが求められます。そのうえで加工する際に必要な柔軟性も持たせなければなりません。三洋化成の『ケミチレン』はこれら相反する特長を併せ持ち、炭素繊維の取り扱い性を改善する能力に優れています。また「トウ」に加工した後、CFRPとして含浸させる樹脂とうまく混ざり合うなど、炭素繊維の強さと変形しにくさをより引き出すように設計されています。
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サイジングした炭素繊維を使用し、フィラメントワインディングにより成形。
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サイジングした炭素繊維を使用し、プルトルージョンにより成形。
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サイジングした炭素繊維をプリプレグとし、金型プレス成形。
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サイジングした炭素繊維をプリプレグとし、オートクレーブ成形。
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サイジングした炭素繊維を織物とし、RTM工法(予備成形後に硬化)、VaBagにより成形。
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サイジングした炭素繊維を、チョップファイバーとしてペレット化した後、射出成形。
リサイクル炭素繊維は、CFRPの端材から樹脂を分解して再生処理を行いますが、マトリックス樹脂をすべて除去されると集束性の無いフワフワした繊維となるため取扱性が低下し、毛羽や粉塵が舞い上がる等の問題も生じやすくなります。
このようなリサイクル炭素繊維に対しても、『ケミチレン』を塗布することにより、炭素繊維の表面を改質し、作業性を向上させることが可能となります。さらに、樹脂とリサイクル炭素繊維の密着性向上、CFRPの機械物性向上も期待できます。
特長 | 効果 | |
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ケミチレン HP・EP シリーズ (ポリエステル/エポキシタイプ) | エポキシ樹脂への含浸性に優れる。 | エポキシ樹脂に良く濡れ、高強度のFRPができる。 |
開繊性に優れる。 | 幅が広く、厚みの薄いトウができる。 | |
毛羽発生が少ない。 | 繊維長を維持でき、高強度のFRPができる。 | |
ケミチレン UAシリーズ (ポリウレタンタイプ) | 柔軟性かつチョップ性に優れる。 | 柔軟で取扱い易い、かつチョップし易いトウができる。 |
EP・HPシリーズとの混合安定性に優れる。 | 混合により好みの物性に調整できる。 | |
ケミチレン WSシリーズ (ポリエーテルタイプ) | 水への分散性が良好。 | 炭素繊維表面に集束剤成分を残したくない場合において、水で洗い落とすことが可能。 |
図. エポキシ樹脂含浸後 炭素繊維複合材料
断面のSEM写真(800倍)
<特長>
・エポキシ樹脂含浸性に優れる
・集束性及び開繊性に優れる
・毛羽発生が少ない
<概略組成>
特殊ポリエステル
ビスフェノールA型エポキシ樹脂
ノニオン活性剤
水
項目 | 一般的な炭素繊維集束剤 (主成分: エポキシ樹脂) | ケミチレン EP-10 | ケミチレン HP-10 | |
---|---|---|---|---|
付着量 wt% | 1.5 | 1.5 | 1.5 | |
CFトウ基本性能 | 毛羽量 ㎎ | 2.9 | 0.7 | 0.5 |
集束性 ㎝ | 13.4 | 18.6 | 17.1 | |
開繊性 ㎜ | 6.5 | 6.7 | 7.4 | |
エポキシ樹脂 含侵性 s | 18.5 | 6.9 | 5.7 | |
エマルション安定性 | 経時安定性 25℃×6months | △ | 〇 | 〇 |
図 ケミチレン UAシリーズ
<特長>
・適度な柔軟性を有する
・チョップ性に優れる
・ケミチレン EP・HPシリーズとの混合安定性に優れるため、
混合により集束性及び開繊性の調整が可能
<概略組成>
特殊ポリウレタン
水
項目 | 一般的な炭素繊維集束剤 | ケミチレン UA-40 |
---|---|---|
付着量 wt% | 1.5 | 1.0 |
集束性 ㎝ | 13.4 | 18.3 |
チョップ性 |
図 ケミチレン EP-10/UA-30混合による性能調整例
『ケミチレン UA』シリーズは、『ケミチレン EP・HP』シリーズとの混合安定性に優れるため、混合により、炭素繊維の集束性及び開繊性の調整が可能です。
<特長>
水溶性タイプであり、水への溶解性に優れる炭素繊維集束剤です。
ケミチレン WS-10 | ケミチレン WS-20 | |
---|---|---|
概略組成 | ポリエーテル水溶液 | 変性ポリエーテル水溶液 |
濃度% | 50 | 30 |
粘度(25℃、mPa・s) | 3,000 | 25,000 |
一般的な炭素繊維集束剤 | ケミチレン WS-10 | ケミチレン WS-20 | |
---|---|---|---|
付着量 wt% | 1.5 | 1.5 | 1.5 |
集束性 ㎝ | 13.4 | 13.1 | 23.8 |
開繊性 ㎜ | 6.5 | 6.6 | 6.4 |
CFトウ性能 *1 | 耐熱性 | ||||
---|---|---|---|---|---|
集束性 | タック | 開繊性 | 毛羽 | Tg ℃ *2 | |
ケミチレン HP-10 | △ | 中 | ◎ | ◎ | 300 |
ケミチレン EP-10 | 〇 | 中 | ◎ | 〇 | 310 |
ケミチレン UA-10 | ◎ | 弱 | △ | ◎ | 270 |
ケミチレン UA-20 | ◎ | 弱 | 〇 | ◎ | 250 |
ケミチレン UA-30 | 〇 | 弱 | 〇 | 〇 | 270 |
ケミチレン UA-40 | 〇 | 弱 | ◎ | 〇 | 230 |
ケミチレン WS-10 | × | 強 | 〇 | N/A | 220 |
ケミチレン WS-20 | 〇 | 中 | 〇 | N/A | 310 |
液状タイプ | 濃度% * | 樹脂種 | イオン種 | |
---|---|---|---|---|
ケミチレン HP-10 | エマルション | 40 | 変性ポリエステル | ノニオン |
ケミチレン EP-10 | エマルション | 40 | 変性ポリエステル | ノニオン |
ケミチレン UA-10 | エマルション | 39 | 変性ポリウレタン | アニオン |
ケミチレン UA-20 | エマルション | 38 | 変性ポリウレタン | アニオン |
ケミチレン UA-30 | エマルション | 40 | 変性ポリウレタン | アニオン |
ケミチレン UA-40 | エマルション | 35 | 変性ポリウレタン | アニオン |
ケミチレン WS-10 | 水溶液 | 50 | ポリエーテル | ー |
ケミチレン WS-20 | 水溶液 | 50 | 変性ポリエーテル | ー |
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