乳化重合用反応性乳化剤(アリル系)『エレミノール JS-20』

三洋化成の反応性乳化剤​
『エレミノール JS-20』はここがすごい

1

(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどのモノマーに対して優れた乳化力と共重合性

(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどのモノマーに対して優れた乳化力と共重合性を示し、ソープフリーエマルションの作製に好適な乳化重合用反応性乳化剤です。なお、『エレミノール JS-20』自身のホモ重合性は僅少です。

2

機械的安定性や化学的安定性に優れたポリマーエマルションを実現

エマルション粒子を構成するポリマー分子中に乳化剤が導入され、分散媒である水中には乳化剤がほとんど残存しないため、機械的安定性や化学的安定性に優れたポリマーエマルションが得られます。

3

高温高湿下でも密着性が低下しにくい、強熱によって黄変しにくい塗膜を実現

エマルション粒子を構成するポリマー分子中に乳化剤が導入され、分散媒である水中には乳化剤がほとんど残存しないため、このポリマーエマルションから形成される塗膜は、乳化剤が塗膜表面に移行しないので密着性や耐水性に優れ、高温高湿下でも密着性が低下しにくい、強熱によって黄変しにくいという特長が得られます。

反応性乳化剤​『エレミノール JS-20』は、ソープフリーエマルションの作製に好適なアリル基含有乳化重合用反応性乳化剤です。


主な性状
外観 淡黄色液状
(低温時、白濁し分離することがあります)
pH 約6.5 (1質量%水溶液)
蒸発残分 約39質量%(蒸発残分以外は、約57質量%の水と約4質量%のイソプロパノール)
粘度 約 100 mPa・s(25℃)

乳化重合用乳化剤について

揮発性有機化合物(VOC)による健康被害や大気汚染の問題を受けて、環境負荷低減の観点から塗料や粘着剤などに使用される合成樹脂は各分野で溶剤系から水系(エマルション)への移行が進められています。近年、SDGsをはじめとした環境・社会課題解決に向けた対応が求められており、水系化が加速しています。その世界市場は金額ベースで年率2~4%程度の成長が予想されています1)。樹脂エマルション製造方法の一つである乳化重合法では、乳化重合用乳化剤(以降乳化剤)と呼ばれる界面活性剤が重要な役割を担っています。

引用文献1:富士経済ホームページ,「粘・接着剤、塗料、インキ等に使用される熱硬化性樹脂、水系樹脂、機能性樹脂・素材の世界市場を調査」(2019年)https://www.fuji-keizai.co.jp/market/15115.html

乳化重合における乳化剤の役割

乳化重合は、水に難溶性であるモノマーを、撹拌下で水中に乳化分散してラジカル重合する方法のことです。高重合度のポリマーが得られやすい、反応温度を制御しやすい、ミセルを反応場としているため反応が速いといった特長があります。

乳化重合は次の過程で進行します2)
①まず水に溶解した乳化剤が直径5nm程度のミセルを形成する。
②モノマーを滴下すると、ミセルに取り込まれて可溶化されるものと、ミセルに取り込まれずに数μmのモノマー油滴となるものに分かれる。
③水中で開裂した開始剤ラジカルがミセルに侵入し重合が開始する。
④ミセルで生成した粒子に、モノマー油滴からモノマーが拡散、供給されて粒子が成長する。
⑤モノマー油滴から粒子に供給された全てのモノマーが重合することで完結する。

乳化剤の役割は本過程の状況とともに変化します。初期においてはミセルを形成しモノマーを可溶化すること、初期から中期においてはモノマー・オリゴマーを乳化すること、中期から後期においては生成、成長したポリマー粒子を安定に分散することが求められ、全工程において乳化剤は重要な役割を担っています。

引用文献2:Seigou Kawaguchi, “Synthesis andPhysics of Polymer Particles,”J.Jpn.Soc.Colour Mater., 80(11),462-476,(2007)

三洋化成の乳化重合用乳化剤

当社の乳化剤の構造と特長を下表に示します。ノニオン性とアニオン性があり、それぞれ乳化性や分散安定性、粒子径などに特長があり、目的に応じて選択され、併用されることも多くあります。

反応性イオン性製品名構造特長
非反応性ノニオン性エマルミン
シリーズ
ポリオキシエチレンアルキルエーテル生分解性良好
ナロアクティー
CLシリーズ
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルアルキルフェニルエーテル系と同等の性能を有する
アニオン性エレミノール CLS-20ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステルアンモニウムアルキルフェニルエーテル系と同等の性能を有する
サンデット ONA2-エチルヘキシル硫酸エステルナトリウム粒子径の大きなエマルションの乳化重合に好適
サンモリン
OT-70
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム浸透性やレベリング性を付与
反応性アニオン性エレミノール
JS-20
アクリル系モノマーに対して優れた共重合性を示す。
機械的・化学的に安定性に優れたエマルションが得られる。

以前は、乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(APE)とその硫酸エステル塩が性能面およびコスト面から多く使用されてきました。APE系乳化剤が性能面で優れるとされる理由には、性能に悪影響を及ぼす未反応のアルキルフェノールや低付加モル数のAPEが少ないことが挙げられます。しかしながら、「環境ホルモン物質」としての疑いが生じたため、環境に対するリスクを低減するためにAPE系乳化剤からポリオキシアルキレンアルキルエーテル(AE)系乳化剤への代替が進められました。

APEやAEは、フェノール基やアルコール基に、エチレンオキサイド(EO)などのアルキレンオキシドを付加させて作られます。付加モル数やその分布は、乳化剤の性能を決める親水性と疎水性のバランスなどに大きく影響しますが、従来のAEは、アルコール基へのEO付加反応がフェノール基のように選択的に進まないため、未反応アルコールや低付加モル数のAEを多く含有していました。

当社は、独自のアルキレンオキシド付加重合技術によって、AE系でありながら、これらの含有率を少なくした『ナロアクティー CL』シリーズをラインアップしました。『ナロアクティーCL』シリーズの付加モル分布は従来のAE系より狭く、APE系と同等であるため、乳化性は従来のAE系よりも優れ、APE系と同等以上となります。

同じく、上記付加重合技術をベースとしたアニオン系の『エレミノール CLS-20』として硫酸エステル塩をラインアップしており、これらはAPE系硫酸エステル塩と同等以上の乳化性を有します。

反応性乳化剤について

乳化剤による副作用と反応性乳化剤の開発

乳化剤は樹脂エマルションを製造するうえで重要な役割を担っていますが、一方で乳化剤による副作用が問題となることがあり、溶剤系から水系化を進めるうえで障害となる場合があります。乳化剤は基本的にはポリマー(樹脂)粒子表面に吸着している状態のため、一部遊離するとエマルションの泡立ちやコーティング時の塗膜欠陥の原因となることがあります。また乾燥後の樹脂中で乳化剤が集合したり表面(界面)移行することで、樹脂中に水を呼び込んで白化を引き起こしたり、基材との密着阻害を引き起こすこともあります。このような副作用を軽減するために開発されたのが反応性乳化剤です。

反応性乳化剤とは分子中にモノマーと反応するラジカル重合性の二重結合を持った乳化剤です。反応性乳化剤は従来の非反応性乳化剤と同等以上の優れた乳化性を有しつつ、モノマーと共重合することで樹脂粒子表面に結合し分散安定性を付与します。樹脂粒子に取り込まれるため、エマルション中への遊離量が少なく、泡立ちを低減できます。また乾燥後の白化や基材との密着阻害を低減できます。

当社の反応性乳化剤

当社は反応性乳化剤として、重合性基がアリル基である『エレミノール JS-20』をラインアップしています。『エレミノール JS-20』は各種アクリル系モノマーとの共重合性に優れています。

『エレミノール JS-20』の界面化学特性

『エレミノール JS-20』の界面化学特性と乳化重合試験結果を示します。

界面化学特性

『エレミノール JS-20』は、下表に示しますとおり、各種モノマーに対して優れた乳化力を示す界面活性剤です。

界面化学特性(水溶液)
エレミノール JS-20 (参考)比較例
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
表面張力 mN/m 32.0 32.6
起泡性 mm 150 (120) 175 (155)
臨界ミセル濃度 wt% 0.02 0.08
モノマー乳化力 スチレン ×
メタクリル酸メチル
メタクリル酸エチル
メタクリル酸ブチル
アクリル酸2-エチルヘキシル
酢酸ビニル

〔試験方法〕
表面張力の測定方法

蒸発残分0.1質量%の乳化剤水溶液の 20℃での表面張力をウィルヘルミー法で測定した。

起泡性の測定方法
蒸発残分0.1質量%の乳化剤水溶液の 30℃での泡立ちの高さをロスマイルス法で測定した。表中( )内に示す数値は5分後の泡立ちの高さ。

臨界ミセル濃度の測定方法
25℃、電導度法で測定した。値は蒸発残分(質量%)で示した。

モノマー乳化力の測定方法
蒸発残分5質量%の乳化剤水溶液50gとモノマー50gを、ホモジナイザーを用いて2000rpmで5分間かくはんして調製したモノマーエマルションの、20℃での安定時間を測定し、以下の基準でモノマー乳化力を判定した。

<モノマー乳化力の判定基準>
◎:モノマーエマルションが 72 時間以上安定
○:モノマーエマルションが4時間以上 72 時間未満安定
△:モノマーエマルションが1時間以上4時間未満安定
×:モノマーエマルションが1時間未満で破壊

『エレミノール JS-20』の乳化重合試験結果

各種モノマーとの共重合性

 他のモノマーとのモノマー反応性比およびQ値、e値

反応性乳化剤をM1で他のモノマーをM2で表すと、これらモノマーが競争付加する際の反応速度定数比r1(M1ラジカルにM1モノマーもしくはM2モノマーが競争付加する際の反応速度定数比)とr2(M2ラジカルにM1モノマーもしくはM2モノマーが競争付加する際の反応速度定数比)は下記の素反応の速度定数比として表わされます。

『エレミノール JS-20』の共重合性に関する推定

下表のQ値、e値および反応性比より、『エレミノール JS-20』に関して以下のことが推定できます。

推定①:

メタクリル酸メチルまたはアクリル酸2-エチルヘキシルとの共重合の場合、r2r1r1×r2≒1であり、『エレミノール JS-20』は重合の初期には重合しにくいが、重合の後期には相対的に『エレミノール JS-20』の濃度が増すので共重合しやすくなる(重合の初期および中期は、乳化剤としての作用が大きく重合安定性が良好)。交互共重合性は小さい。

推定②:
スチレンとの共重合の場合、r2r1r1×r2≪1であり、『エレミノール JS-20』は重合の初期には共重合しにくく、かつ、Q値の差が大きいので共重合速度が遅い。ただし、交互共重合性はややある。

『エレミノール JS-20』および各種モノマーのQ値、e値
注)Q値、e値は小数点以下二桁目を四捨五入してあります。
Q値 e値
エレミノール JS-20 0.1 0.2
メタクリル酸メチル 0.7 0.4
アクリル酸ブチル 0.4 0.5
アクリル酸 2-エチルヘキシル 0.4 0.4
スチレン 1.0 -0.8

メタクリル酸 2-ヒドロキシエチル

1.8 -0.4
アクリル酸 1.3 0.8
メタクリル酸 2.3 0.7
『エレミノール JS-20』と他のモノマーとのモノマー反応性比
   
モノマー1 モノマー2 r1 r2 r1 × r2
エレミノール JS-20 メタクリル酸メチル 0.13 7.21 0.94
エレミノール JS-20 アクリル酸ブチル 0.30 2.20 0.66
エレミノール JS-20 アクリル酸 2-エチルヘキシル 0.27 3.68 0.99
エレミノール JS-20 スチレン 0.08 4.53 0.36
エレミノール JS-20 メタクリル酸 2-ヒドロキシエチル 0.05 14.1 0.71
エレミノール JS-20 アクリル酸 0.14 4.59 0.64
エレミノール JS-20 メタクリル酸 0.23 3.57 0.82

〔試験方法〕
試 料

反応性乳化剤とその他のモノマーを上表の組み合わせで、それぞれ5種類のモル比で以下の条件で重合し試料とした。

 <重合条件>
モノマー濃度:40質量%(希釈溶媒:トルエン)
重合開始剤:アゾビスイソブチロニトリル 1.1 質量%(対モノマー)
反応温度、時間:80℃で10 分(重合転化率を 10 質量%以下とする目的で10 分とした)

測定方法
試料を所定量のメタノールに加えて重合物を沈殿ろ過分別し、乾燥質量を測定した。また、ろ液の結合硫酸量から未反応の反応性乳化剤量を定量した。次いで、式Ⅰから交点法でr1r2を求め、Alfrey-Price の式にr1r2、および他のモノマーのQ値、e値を代入し反応性乳化剤のQ値とe値を求めた。

 <式Ⅰ>
共重合したM1量 = 原料として使用したM1量 - 未反応M1
共重合したM2量 = 重合物の質量 - 共重合したM1

 <Alfrey-Price の式>

他のモノマーとの乳化共重合率

『エレミノール JS-20』は、下表に示しますように、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの乳化共重合に優れています。

他のモノマーとの共重合率 %
エレミノール JS-20
メタクリル酸メチル 90
アクリル酸ブチル 70
スチレン 30

〔試験方法〕
試料

反応性乳化剤とその他のモノマーを上表の組み合わせで、それぞれ以下の条件で重合し試料とした。

<重合条件>
モノマ ー:10 部
反応性乳化剤:0.6 部(蒸発残分量)(対モノマー6質量%) 
重合開始剤:2,2'アゾビス-2-アミジノプロパン塩酸塩0.03 部(対モノマー0.3 質量%)
イオン交換水:90部
反応温度、時間:80℃で8時間

測定方法
試料を所定量のメタノールに加えて重合物を沈殿ろ過分別し、乾燥した。
この重合物をキシレンに溶解しICP分析でS含量を測定し、S含量から共重合した反応性乳化剤量を求めた。次いで、式Ⅱから共重合率を算出した。



 【処方例1】 メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチルの乳化重合試験結果

比較的泡立ちが少ない非反応性乳化剤であるDBS(ドデシルベンゼンスルホン酸Na)と比較した結果を下表に示します。『エレミノール JS-20』の乳化重合性はDBSと同等以上であり、重合安定性に優れ、機械的安定性および化学的安定性に優れたポリマーエマルションが得られます。

また、このポリマーエマルションは密着性に優れ耐水性の良好な乾燥被膜を形成します。

【処方例1】 メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチルの乳化重合試験結果
 * ( )内は5分間静置後、[ ]内は30分間静置後の泡の体積を示しました。
エレミノール JS-20比較例
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
乳化重合性ポリマーエマルション蒸発残分 wt%40.640.5
モノマー重合転化率 wt%98.998.5
重合安定性 wt%0.10.8
ポリマー
エマルション
としての特性
粘度 mPa・s2124
粒径 μm0.100.11
起泡性* mL40(34)[16]66(57)[38]
機械的安定性 wt%0.0050.298
化学的安定性 mL500以上28
乾燥被膜
としての特性
耐水性吸水率 wt%9.851.7
耐水白化性
密着性 N/cm9.63.8

【処方例1】 〔試験方法〕
試料

下記の原料を用いて下図記載の方法で作製したポリマーエマルションを試料とした。

ポリマーエマルション蒸発残分の測定方法
試料を130℃で90分間乾燥後に質量を測定し、試料質量に対する試料乾燥後の質量の百分率を蒸発残分とした。

モノマー重合転化率の測定方法
試料を130℃で 90分間乾燥後に質量を測定し、ポリマーエマルションの理論蒸発残分量[試料作製に用いた、原料モノマー、乳化剤(蒸発残分量)、重合開始剤、および緩衝剤の使用量の総和]に対する試料乾燥後の質量の百分率をモノマー重合転化率とした。

重合安定性の測定方法
試料中に生成している凝集物(目開き100μm金網でろ過・分別後、130℃で90分間乾燥)の質量を測定し、原料モノマー質量に対する凝集物乾燥後の質量の百分率で重合安定性を評価した。数値が小さいほど、凝集物の生成量が少なく、重合安定性が良好であることを意味します。

ポリマーエマルションの粘度測定方法
B型粘度計を用いて、25℃、60rpmで試料の粘度を測定した。

ポリマーエマルションの粒径測定方法
動的光散乱法により試料中のエマルション粒子のキュムラント平均粒径を測定した。

ポリマーエマルションの起泡性測定方法
試料を蒸発残分3.0質量%に希釈した液 30mLを150mL共栓付メスシリンダーにとり、10回強振直後の泡の体積を測定した。なお( )内は5分間静置後、[ ]内は30分間静置後の泡の体積を示しました。

ポリマーエマルションの機械的安定性測定方法
マーロン法にて試料に5分間機械的負荷(98N)をかけ、生成した凝集物の乾燥後の質量を測定し、試料中の蒸発残分量に対する凝集物の乾燥後の質量の百分率を求めた。数値が小さいほど凝集物の生成が少なく、機械的安定性が良好であることを意味します。

ポリマーエマルションの化学的安定性測定方法
試料を蒸発残分 0.5 質量%に希釈した液50g中のポリマーを凝固分離させるのに要する0.1mol/L 塩化カルシウム液量を測定した。数値が大きいほど化学的安定性が良好であることを意味します。

被膜の吸水率測定方法
試料をガラス板上で70℃にて8時間乾燥して作製した被膜(厚さ0.2mm)の吸水率をJIS K 6828の浸せき溶出率測定法に準じて測定した。

被膜の耐水白化性測定方法
試料をガラス板上で70℃にて8時間乾燥して作製した被膜(厚さ0.2mm)の耐水白化性をJIS K 6828に準じて測定した。浸せき240時間後の被膜の状態を以下の基準で判定した。浸せき後の塗膜が透明なほど耐水性が良好であることを意味します。

<耐水白化性の判定基準>
◎:完全に透明、 △:わずかに白化

被膜のガラスに対する密着性測定方法
試料をガラス板上で70℃にて8時間乾燥して作製した被膜(厚さ0.2mm)のガラスに対する180゜はく離強度を測定し、ガラスに対する密着性とした。なお、被膜は綿布で補強し、オートグラフ(引張速度100mm/min)を用いて40℃で測定した。

<ポリマーエマルションの原料>

原料 使用量g
分類① 原料名
モノマー① メタクリル酸メチル 99.0
モノマー② アクリル酸ブチル 81.0
乳化剤 上表に記載のとおり 7.2
(蒸発残分)
重合開始剤 過硫酸アンモニウム(APS) 0.90
緩衝剤 炭化水素ナトリウム(NaHCO3) 0.36
分散媒 イオン交換水 270.0




図 ポリマーエマルションの作製方法(モノマー滴下法)

 【処方例-2 】 2-エチルヘキシルアクリレート/アクリル酸ブチル(アクリル系粘接着)の乳化重合試験結果

また『エレミノール JS-20』を反応性乳化剤として用いた際、高温高湿下でも密着性が低下しにくい、強熱によって黄変しにくいという特長が得られます。

【処方例-2 】乳化重合試験結果(2-エチルヘキシルアクリレート/アクリル酸ブチル)
     
エレミノール JS-20アリル系サルフェート
(反応性)
ポリオキシエチレン
アルキルエーテルサルフェート
(非反応性)
乳化重合性重合転化率 %98.599.098.2
凝集物量 %0.091.032.11
平均粒子径 nm989697
エマルション物性起泡性 mL
(直後/5分後)
10/78/212/9
表面張力 mN/m585950
粘度 mPa・s434548

試験方法:
重合転化率:蒸発残留物と仕込み固形分の差異から算出。
凝集物量:目開き100μmメッシュのろ過残渣物量/仕込み固形分
平均粒子径:動的光散乱法
起泡性:エマルション20mLを手振り振とう直後と5分後の泡容量
表面張力:ペンダントドロップ法
粘度:B型粘度計

【処方例-2 】密着性評価試験結果(2-エチルヘキシルアクリレート/アクリル酸ブチル)
単位:N/25mm
貼り合わせ後 85℃×85%R.H.×72h保管後
エレミノール JS-20 3.9 3.7
アリル系サルフェート(反応性) 3.5 1.5
ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート
(非反応性)
3.4 1.0

密着性試験方法
PETフィルム上に粘着被膜(膜厚:100μm)を形成後、幅25mmにカットし、ガラス板と貼りあわせ、1晩養生。
180°剥離時(300mm/min)の密着力を測定。

【処方例-2 】乳化重合条件(2-エチルヘキシルアクリレート/アクリル酸ブチル)

モノマー : アクリル酸2-エチルヘキシル / アクリル酸ブチル / アクリル酸 = 49/49/2wt%
固形分 : 37wt%
乳化剤量 : 2.0wt%対モノマー


図 乳化重合フロー
(2-エチルヘキシルアクリレート/アクリル酸ブチル)

 【処方例-3】2-エチルヘキシルアクリレート/メタクリル酸メチル(アクリル系粘接着)の乳化重合試験結果

【処方例-3】乳化重合試験結果(2-エチルヘキシルアクリレート/メタクリル酸メチル)
     
エレミノール JS-20アリル系サルフェート
(反応性)
ポリオキシエチレン
アルキルエーテルサルフェート
(非反応性)
乳化重合性重合転化率 %98.498.698.5
凝集物量 %0.320.102.53
平均粒子径 nm9495100
エマルション物性起泡性 mL
(直後/5分後)
15/1314/1219/17
表面張力 mN/m565654
粘度 mPa・s525555

試験方法:
重合転化率:蒸発残留物と仕込み固形分の差異から算出。
凝集物量:目開き100μmメッシュのろ過残渣物量/仕込み固形分
平均粒子径:動的光散乱法
起泡性:エマルション20mlを手振り振とう直後と5分後の泡容量
表面張力:ペンダントドロップ法
粘度:B型粘度計

【処方例-3】密着性評価結果(2-エチルヘキシルアクリレート/メタクリル酸メチル)
単位:N/25mm
貼り合わせ後 85℃×85%R.H.×72h保管後
エレミノール JS-20 6.6 6.3
アリル系サルフェート(反応性) 6.7 4.4
ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート
(非反応性)
6.8 3.2

密着性試験方法
PETフィルム上に粘着被膜(膜厚:100μm)を形成後、幅25mmにカットし、ガラス板と貼りあわせ、1晩養生。
180°剥離時(300mm/min)の密着力を測定。

【処方例-3】耐熱性評価結果(2-エチルヘキシルアクリレート/メタクリル酸メチル)
img_eleminoljs20_thermalstab_2EHAMMA(js20)2

図 エレミノール JS-20(耐熱試験後塗膜)

img_eleminoljs20_thermalstab_2EHAMMA(ref)2

図 他社品アリル系サルフェート(耐熱試験後塗膜)

耐熱試験方法
樹脂エマルションを130℃×90min加熱後の外観を比較。

【処方例-3】乳化重合条件(2-エチルヘキシルアクリレート/メタクリル酸メチル)

モノマー : アクリル酸2-エチルヘキシル / メタクリル酸メチル / アクリル酸 = 68/30/2wt%
固形分 : 37wt%
乳化剤量 : 2.0wt%対モノマー


図 乳化重合フロー(2-エチルヘキシルアクリレート/メタクリル酸メチル)

『エレミノール JS-20』の使用方法

1.各種モノマーの乳化重合用乳化剤として、単独で用いるか、他の乳化剤と併用してください。
2. 一括仕込法、モノマー滴下法、プレエマルション法のいずれの乳化重合方法にも使用できます。
3. 使用量は、乳化重合方法などによって異なりますが、標準的にはモノマーに対して 0.5~5質量%(蒸発残分)です。

誤使用に対する注意事項

『エレミノール JS-20』はアニオン系ですので、カチオン系薬剤と併用しますと凝集物を生じ所期の性能を発揮しない恐れがあります。カチオン系薬剤との併用は避けてください。

本品を取り扱うにあたっては、本品および副資材(化学品)の「安全データシート」(SDS)を事前に必ずお読みください。なお、SDSはこちらからも入手できます。 https://www.sanyo-chemical.co.jp/products/sds/

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三洋化成ニュース No.513 乳化重合用乳化剤

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注意事項

ここに記載された情報は、弊社の最善の知見に基づくものですが、いかなる明示または黙示の保証をするものではありません。
①すべての化学品には未知の有害性がありうるため、取り扱いには細心の注意が必要です。本品の適性に関する決定は使用者の責任において行ってください。
②この情報は、細心の注意を払って行った試験に基づくものですが、実際の現場結果を保証するものではありません。個々の使用に対する適切な使用条件や商品の適用は、使用者の責任においてご判断ください。
③この情報は、いかなる特許の推薦やその使用を保証するものではありません。