まず、界面とは異なった性質を持つ2つの物質の間に存在する境界面のことで、液体と固体、液体と液体、液体と気体の間に界面が存在します。
この界面において洗浄や乳化、分散、湿潤、浸透などの機能を発揮して性能を高めるのが界面活性剤です。
界面 = 異なった性質を持つ2つの物質の間に存在する境界面
液体と固体 : コップとコーヒー、機械と潤滑油
液体と液体 : 水と油
液体と気体 : 海水と大気、シャボン玉
界面活性剤の役割例
洗浄 ・・・ 汚れを落とす
乳化・分散 ・・・ 混ざり合わないものを混ざりやすくする
湿潤・浸透 ・・・ 濡れやすく、しみ込みやすくする
・界面活性剤は分子中に親油基(油になじむ部分)と親水基(水になじむ部分)という異なる性質を持つ構造を有しています。
・界面活性剤には親水基の構造によって、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、両性系(アニオンとカチオンを両方有する)4つに大別されます。
界面活性剤の種類 | 特徴 | 主な用途 | 組成例 |
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ノニオン系界面活性剤 (非イオン界面活性剤) |
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アニオン系界面活性剤 |
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カチオン系界面活性剤 |
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両性界面活性剤 |
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三洋化成では様々な機能を発揮する「界面活性剤」を取り扱っています。機能別に7本のショートムービー構成で紹介しています。
界面活性剤の機能紹介動画の構成
0:00 界面活性剤の機能紹介
0:21 パート① 洗浄性(布の洗浄実験)
1:05 パート② 浸透性(疎水性繊維への浸透性付与の実験、不織布への浸透性付与の実験)
2:15 パート③ 分散性(無機顔料の分散実験)
3:00 パート④ 起泡性(起泡剤添加の実験)
3:25 パート⑤ 消泡性(消泡剤添加の実験)
3:44 パート⑥ 平滑性(シートベルトの平滑性テスト)
4:25 パート⑦ 抗菌性(抗菌剤添加の実験)
本ページでは、界面活性剤の代表機能の1つである洗浄機能について記載します。
洗浄における界面活性剤の働きとしては、まず初めに汚れに吸着します。次に汚れと衣服などの間に浸透します。
その後、衣服から汚れを離して、汚れを小さく分散、乳化して安定化させることで、衣服への再汚染を防止します。
初めに、界面活性剤分子が油脂汚れに吸着して、ぬれやすくなります。
界面活性剤のアルキル基が油性の汚れとくっついて、親水基が水の方に配向します。
界面活性剤の浸透作用によって、汚れや、汚れと繊維等の被洗物の間に界面活性剤が浸透していきます。
界面活性剤は、汚れと被洗物の間に浸透していることにより、機械的な作用が加わったときに、被繊物から汚れが離れるのを助けます。
界面活性剤は、水と油の界面張力を低下させることができ、被洗物から離れた汚れを水中で小さく分散、乳化して安定化させることで、衣服への再汚染を防止します(再汚染防止作用)。
界面活性剤の起泡作用により、生じた泡の表面に汚れを取りこみ、繊維の表面から引き離します。
(泡は、洗浄力と直接的な関係はないものの、洗浄時の摩擦を低減し、汚れをキャッチして、浮き上がらせる役割を担います。)
油で汚れた繊維が水中にあるとき、横から見ると図のような形をしています。油汚れと水と繊維の3つが接触する点では、3種の界面張力がつり合っているため、以下の式で、力のつり合いを表すことができます。
γws =γos + γwo cosθ
次いで、水の中に界面活性剤が加えられると、水と油汚れ、水と繊維の間の界面に界面活性剤が吸着して、これらの界面張力(γws、γwo)を低下させるので、3つの力のバランスが変化します。
界面活性剤の添加により、水と油汚れ、水と繊維の界面張力が小さくなって、力のバランスが変化すると、油汚れの接触角θは大きくなり、それとともに油汚れは、丸くなっていき、ついには水中に移行します。このような油汚れの変形の過程はローリングアップと呼ばれ、洗浄にとって重要な現象の1つです。
図 ローリングアップ
汚れ粒子と繊維の間には、引き合う力(ファン・デル・ワールス力)と反発する力(電気的斥力:一般的に汚れ粒子も繊維も水中では、マイナスに帯電)が存在し、汚れ粒子のポテンシャルエネルギーは、これら2つのエネルギーの合算となります。
洗浄のしやすさ(A点⇒B点⇒C点)
A点が汚れ繊維が繊維に付着した状態であり、汚れ粒子が離れるためにはB点を越えていく必要があります。このA点とB点のポテンシャルエネルギーの差(Vmax+Vmin)によって洗浄のしやすさが決まり、この値が小さいほど汚れは洗浄しやすく、この値が大きいほど洗浄しにくくなります。
再汚染(C点⇒B点⇒A点)
C点は、汚れ粒子が完全に繊維から離れた状態を示しますが、このB点とC点のポテンシャルエネルギーの差が小さいと、C点に行った粒子がB点を通ってA点に戻りやすくなります(再汚染)。
洗剤中の界面活性剤は、ポテンシャルエネルギーの山の高さを大きくし、繊維表面に近づけることによって、汚れを落としやすく、かつ再汚染しにくくする働きをしています。 界面活性剤の種類としては、アニオン性界面活性剤がよく使われています。これは、アニオン界面活性剤の方が、泥汚れや繊維に吸着してマイナスの帯電量をさらに増やし、反発するエネルギー(電気的斥力)を高める働きをするためです。
毎日の生活の中で、衣類には様々な汚れが付着します。一口に汚れといっても身体からくる汚れ(皮脂、汗、あかなど)や外からくる汚れ(ほこり、泥など)など様々な種類があり、大きくは汗、血液、果汁などの親水性の汚れ、皮脂やあか、化粧品、食用油などの親油性の汚れに分けられます。
洗われる衣料素材も、木綿や麻、ウールなどの天然繊維から、レーヨンなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ナイロンやポリエステル、アクリルなどの合成繊維まで多岐に渡ります。各種の衣料洗剤についた様々な汚れを落とす必要があるのが、家庭で使われる衣料用洗剤です。
汚れを効率的に落とす洗濯の5要素
衣類、汚れ、洗剤、水、機械的作用
界面活性剤 | 湿潤・界面張力低下・乳化分散・再汚染防止作用により、洗浄に寄与する。 |
---|---|
アルカリビルダー | 洗浄液をアルカリ性にして、繊維と汚れの表面電位を増やし反発力を高める。 |
金属イオン補足剤 | 界面活性剤はやアルカリビルダーは、水中のCaイオンやMgイオンと結合すると、 その働きが低下するため、これらのイオンを補足する。 |
再汚染防止剤 | 一度繊維から離れた汚れが再付着するのを防止する。 |
酵素 | タンパク質汚れや、油脂汚れを分解し、洗い落としやすくする。 |
その他 | 必要に応じて漂白剤、ケーキング防止剤など |
衣料用洗剤に使用される活性剤は、主にアニオン界面活性剤か、非イオン界面活性剤です。実際の使用では、これのものが単品で使用されることは少なく、数種が組み合わせて使用されます。
分類 | 成分 | 構造 |
---|---|---|
アニオン性界面活性剤 | 脂肪酸ナトリウム(石けん) | R-COO-Na+ |
アニオン性界面活性剤 | 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS) | R-C6H4SO3-Na+ |
アニオン性界面活性剤 | アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(AS) | R-O-SO3-Na+ |
アニオン性界面活性剤 | アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(AES) | R-O(CH2CH2O)SO3-Na+ |
アニオン性界面活性剤 | α-オレフィンスルホン酸ナトリウム(AOS) | R-CH=CHCH2SO3-Na+ |
非イオン界面活性剤 | ポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE) | R-O(CH2CH2O)H |
洗う場所、洗うもの | 汚れの種類 | |
---|---|---|
台所 | 食器、野菜 レンジまわり フード 換気扇 |
・動・植物性油脂、タンパク質、でんぷん、泥、残留農薬 ・変性油脂(動・植物性油脂が熱や光によって酸化、重合を起こして樹脂化したもの) ・こげつき汚れ(油脂などの汚れが、高熱により炭化したもの) |
居間 | 床(木質、カーペット) 壁、家具 窓ガラス、網戸 |
・ほこり、泥汚れ、食べこぼし、油汚れ、手あか、タバコのヤニ |
浴室 | 浴槽、床、排水管 壁・天井 |
・石けんかす(脂肪酸のCa塩など)、身体由来のタンパク質・脂質からなる複合汚れ |
トイレ | 便器、床 | ・リン酸、尿酸などとバクテリア代謝物に水道水中の多価金属が複合したもの |
台所周りで使われる主な洗剤として、台所用液体洗剤、クレンザー、漂白剤、自動食器用洗浄機用洗剤、レンジフード・換気扇用洗剤などが挙げられます。
界面活性剤 | アルキルエーテル硫酸エステル塩が洗浄力、起泡力、溶解性に優れ、 手荒れも少ないことから一般的に用いられる。 |
---|---|
泡安定剤・増粘剤 | ヤシ油やパーム核油から得られる脂肪酸のジエタノールアミドが、 泡安定効果、配合系の増粘効果があることからよく用いられる。 |
手荒れ防止剤 | アミンオキサイドやアミドベタイン型両性界面活性剤に手荒れ防止効果が あることが知られており、よく使用されている。 |
可溶化剤 | 台所用洗剤が冬季でも固まったり濁ったりしないように添加される。 |
居間の汚れの大部分は、泥や繊維のほこりと手足によってつけられる汚れです。
住宅に使用される内装材は、合成樹脂で表面加工されたものが主流です。これらの素材は親油性であるため、油性の汚れがつきやすく、また一般的に静電気を帯びて空気中のほこりやタバコの煙などを吸着しやすい性をもっています。
泥やほこりの大部分は電気掃除機で除去されますが、とり切れない汚れには洗剤の力が必要となります。居間の汚れ除去に用いられる洗剤としては、木質の床、家具用の汎用洗剤、カーペット用洗剤、窓ガラス用洗剤が代表的です。
木質のほか、新建材の床、壁、家具の畳の汚れが対象で、汚れは通常手足のあかや土ぼこり、タバコのヤニなどから構成されており、界面活性剤の作用で比較的容易に除去できます。
したがって、界面活性剤を主体にした洗剤が有効であり、水で希釈して使用する濃縮タイプ、そのまま使えて二度ふき不要の低濃度タイプなどがあります。ただし、いずれも使用前に一度試しふきをして、白木や塗装の表面を傷めないか確かめる必要があります。
界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテルなど) | 0.5~1% |
水および水溶性有機溶剤(イソプロピルアルコールなど) | 残量 |
合計 | 100 |
カーペットの洗浄では、丸洗いと部分洗いの2つのケースがありますが、丸洗いの場合は衣類の洗濯と同様の洗剤でよく、ここでは部分洗いの場合の洗剤について紹介いたします。
部分洗いの対象になる汚れは、主に食べこぼしなどのしみです。カーペットは水を使うと乾燥に時間を要するので、汚れを洗剤とともに粉末化し、電気掃除機で吸い取る洗浄法が適します。
エアゾールタイプと粉末タイプの洗剤があり、この洗剤を構成する成分は、界面活性剤、アルカリ、溶剤、および吸着性粉末が一般的です。
・エアゾールタイプは、界面活性剤の水溶液に、水溶性有機溶剤、アルカリ、吸着性粉末を配合したものなので、汚れを抱き込んで乾燥します。
・粉末タイプは尿素樹脂などの吸着性粉体に界面活性剤、および溶剤を配合したもので、よごれの部分に散布しブラッシングをしてふんまつに汚れを吸着させます。
吸着性粉末(例えば尿素樹脂粉末) | 約60% |
界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテルなど) | 約5% |
水および水溶性有機溶剤(イソプロピルアルコールなど) | 残量 |
合計 | 100 |
窓ガラスの汚れは、通常、水溶性および非水溶性成分の複合物から構成されています。
したがって、水だけではなかなか汚れは落ちず、界面活性剤、アルカリ、水溶性有機溶剤の作用が必要となります。
窓ガラスふきは足場の悪い場合が多く、手ふきの回数は少ないことが望ましくなります。そこで窓ガラス用洗剤の主流は、エアゾールまたはスプレーによって洗剤を吹き付けた後、一度のふき取りですますことができるものになっています。また、窓ガラスはほとんど垂直面であるため、洗剤液がガラス面にしばらく滞留していることが必要です。このため泡沫状に吹き付け、筋流れをしない工夫がなされています。
窓ガラス用洗剤に用いられる界面活性剤としては、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アミン塩、アルキルエーテル硫酸エステルアミン塩やポリオキシエチレンアルキルエーテルなどが一般的です。なお、界面活性剤の濃度が高いとガラス面に筋が残りやすいので、配合割合は低くしてあります。
界面活性剤(例えば直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸アミン塩) | 0.1% |
トリエタノールアミン | 少量 |
水および水溶性有機溶剤(イソプロピルアルコールなど) | 残量 |
合計 | 100 |
浴室で洗浄の対象となる場所と汚れは、①浴槽の湯あか、②すのこや壁のカビです。以下、それぞれの汚れの除去にどのような洗剤が用いられているか、その機能と処方例を紹介いたします。
浴槽や風呂がまとの連結パイプ内に付着する汚れ(湯あか)はおもに石けんかすと人体から出るタンパク質や油脂からなる複合物です。
なお、石けんかすとは、石けんの主成分である脂肪酸のアルカリ金属塩(Naなど)が水中に含まれるCaやMgなどの多価金属イオンと反応してできる、水に不溶性の金属石けんと呼ばれるものです。
浴室の洗浄には、汚れの程度および浴槽の材質などにより、次のような洗剤が使用されています。
弱いアルカリと界面活性剤の力で汚れを落とすもので、軽度の汚れ落としを目的としたものです。
界面活性剤には浸透性、洗浄力が求められ、さらに耐硬水性のよいことが必要で、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウムや直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどが用いられます。アルカリとしては。アルカノールアミンのような穏和なものが配合されています。
界面活性剤(例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル) | 10% |
トリエタノールアミン | 少量 |
水および水溶性有機溶剤(イソプロピルアルコールなど) | 残量 |
合計 | 100 |
酸性で分解されやすく、また有機溶剤にも溶けやすい石けんかすを主体とした汚れを対象にした洗剤です。このタイプの洗剤は、浴槽の素材を傷めない程度の酸性を有するクエン酸やリンゴ酸などの有機酸と、プロピレングリコールやブチルカルビトールなどの水溶性有機溶剤、さらに洗浄力を向上させる目的で界面活性剤が配合されます。
ここで界面活性剤に求められる機能は、有機酸と併用しても、泡立ち、洗浄力、すすぎ性がよいことで、ポリオキシエチレンアルキルエーテルや直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが単独、または併用して使用されています。
界面活性剤(例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル) | 10% |
有機酸(例えばリンゴ酸) | 少量 |
水および水溶性有機溶剤(イソプロピルアルコールなど) | 残量 |
合計 | 100 |
浴槽の汚れを研磨して落とす目的で使われます。浴槽の材質によっては傷がついて光沢をなくすといったケースもあるので、注意が必要です。
台所周りに使われるクレンザーと、ほぼ同様の配合品が使用されます。
浴室内は温度、湿度とも高く、カビが繁殖しやすい場所です。特に床や壁に使われるタイルの目地、すのこには赤カビや黒カビが好んで繁殖します。
カビは洗剤で洗っても、クレンザーでこすってもほとんど除去できません。このためカビ取り専用の洗剤が開発されています。
主流のカビ取り用洗剤の主成分は、次亜塩素酸ナトリウムで、酸化力によってカビを死滅させるとともに、カビの色素を分解、漂白し、無色化するものです。次亜塩素酸ナトリウム単独では、不安定で保管中に分解して効力を失ってしまうため、安定化剤として水酸化ナトリウムが配合されています。
カビ取り用洗剤は、目に入ったり、肌に付着したり、また吸入したりすると、人体を損傷するおそれがあるので、霧状に飛び散らないよう、容器のノズルに工夫がなされています。また適度に粘着性のある泡を形成し、かつ洗浄力を付与する目的で界面活性剤が配合されています。
界面活性剤としては、強アルカリ下において安定で、次亜塩素酸ナトリウムの安定性を損なわないことが必須の条件であり、脂肪酸石けん、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム塩やアミンオキサイドなどが単独、併用して用いられています。
次亜塩素酸ナトリウム | 約5% |
水酸化ナトリウム | 約2% |
界面活性剤(例えばアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム) | 1~2% |
水 | 残量 |
合計 | 100 |
トイレの汚れは、排泄物由来のリン酸、尿酸などとバクテリアの代謝物に水道水中のCaや鉄分が複合したものが主体になっています。
目的に応じて以下のような各種の洗剤が開発されています。
汚れを積極的にとる目的では、酸性タイプとアルカリ性タイプ(塩素系)があります。
酸性タイプは酸で汚れを溶かす機能をもったもので塩酸が主成分であり、界面活性剤はカチオン界面活性剤などが補助的に用いられます。
一方アルカリ性タイプは浴室のカビ取り剤と同様に、酸化することで汚れを分解する機能をもったもので、次亜塩素酸ナトリウムと水酸化ナトリウムを主成分とし、増粘と洗浄力向上の目的で界面活性剤が配合されています。なお、この種の洗剤には酸性物質と混ざると人体に有害な塩素ガスを発生するため「家庭用品品質表示法」の規定で、それぞれ「混ぜるな危険」の表示が義務付けられています。
塩酸 | 9% |
界面活性剤(例えばラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド) | 1% |
水 | 残量 |
合計 | 100 |
便器の汚れ防止と快適さを求めて、水洗水に溶かし、水洗のたびに洗浄と芳香を漂わせるタイプの便器の汚れ防止用洗剤が開発されています。
前述のトイレ用洗剤がトイレを掃除するときに使用されるものであるのに対し、この洗剤はトイレ使用時に常時使用されるもので、水洗トイレの水槽内に投入するイン・タンクタイプと補給水のかかるタンク上部に置くオン・タンクタイプの2種類があります。
いずれの場合も、水中に徐々に溶けることがポイントであり、基剤としては特殊ポリアルキレングリコールが主に使用されます。
洗浄性をもった徐溶化基剤(例えば特殊ポリアルキレングリコール) | 約60% |
無機塩(例えば硫酸ナトリウム) | 5~30% |
染料 | 4~5% |
香料 | 少量 |
合計 | 100 |
シャンプーは化粧品に分類され、頭皮および毛髪の汚れを落とし、フケやかゆみを抑え、頭皮、毛髪を清潔に美しく保つために用いる洗髪用化粧品と定義されています。汚れは十分に落としつつ、頭皮および毛髪に必要な皮脂は取り過ぎない適度な洗浄力と、頭皮、毛髪および目に対する高い安全性が必要となります。
また、排水として流されることから、活性汚泥処理や自然界の微生物によってたやすく分解される性質(生分解性)も重要な要素となっています。
香粧品処方集:ヘアケアシャンプー・ボデイーシャンプー・洗顔
分類 | 成分 | 概要 |
---|---|---|
アニオン界面活性剤 | アルキル硫酸エステル塩(AS) およびアルキルエーテル硫酸エステル塩(AES) |
汎用的なアニオン界面活性剤。 低刺激性の界面活性剤との併用が多い。 |
アニオン界面活性剤 | アシルメチルタウリン塩(AMT) | 生体界面活性剤であるタウロコール酸と類似した構造で、 安全性に優れる。 |
アニオン界面活性剤 | アルキルエーテルカルボン酸塩(ECA) | 皮膚刺激性が小さく、石けんと類似した構造により、 生分解性にも優れる。 |
アニオン界面活性剤 | アルキルエーテルスルホコハク酸塩(SS) | 皮膚刺激性が小さく、良好な泡立ちを示す。 分子内にエステル結合があるため加水分解されやすく、 中性~弱酸性のpH領域で扱う必要がある。 |
アニオン界面活性剤 | N-アシルグルタミン酸塩(AG) | アミノ酸を原料として製造されるアミノ酸系界面活性剤。 AS、AES比で泡質が軽く、 皮膚や目に対する刺激性が低い。 |
両性界面活性剤 | アルキルベタイン(AB) アルキルアミドプロピルベタイン(APB) |
汎用の両性界面活性剤 |
両性界面活性剤 | アルキルアミノプロピオン酸塩(AIB) | 特に目に対する刺激性が低い |
両性界面活性剤 | アルキルアミノプロピオン酸塩(APL) | アミノ酸タイプの両性界面活性剤。 アニオン界面活性剤との組み合わせで増粘させやすい。 |
工業的な分野では、洗浄の対象が千差万別となります。例えば、自動車産業を例にとってみても部品の点数は膨大で、しかも形状や大きさ、材質、汚れの成分もそれぞれに異なっています。さらに、その部品の用途に応じて洗浄後に要求される清浄度も異なります。電気、電子産業、精密機械産業、熱処理産業、メッキ産業の洗浄においても同じようなことが言えます。
産業分野 | 被洗浄物 | 洗浄目的 |
---|---|---|
自動車産業 | 金属加工部品、自動車ボディー | 脱脂、バフ研磨材除去、塗装前処理 |
電気、電子産業 | プリント基板、半導体材料、電動機材料、金属加工部品 | フラックス除去、脱脂、塗装前処理 |
精密機械産業 | 時計、写真機部品、ベアリング | 脱脂、微粒子除去 |
熱処理産業 | 金属加工部品、粉末治金部品 | 脱脂 |
メッキ産業 | 金属加工部品、樹脂加工部品 | 脱脂、バフ研磨剤除去 |
有機系の汚れ | 熱処理油、グリース、引き抜き油、切削加工油、プレス加工油、さび止め油、その他各種潤滑油 |
無機系の汚れ | 加工くず、バリ、研磨剤、ダスト、さび |
その他 | インキ、フラックス、ワックス、接着剤など |
ハロゲンを含有しない洗浄剤は、下表のように水系、準水系、非水系洗浄剤に分類されます。
水系の洗浄剤は、さらにアルカリ系、中性系、酸性系に分類されます。
代表的な水系の洗浄剤であるアルカリ系洗浄剤の内容をみてみると、界面活性剤、ビルダー、消泡剤、キレート剤、さび止め剤などからなっています。界面活性剤は、湿潤作用、界面張力低下作用、乳化、分散、可溶化作用を示し洗浄に寄与しています。
準水系洗浄剤の成分としては溶剤に水を加えたものが多く、水系の洗浄剤では洗浄力が不十分な油性の汚れの洗浄に効果的です。準水系洗浄剤として用いられる溶剤はグリコールエーテルやテルペン類であり、これらの成分に水や界面活性剤を加えたものが洗浄剤として使われています。グリコールエーテルなどの溶剤は、それら自身の引火点が比較的高いため水を5~20%程度加えることによって引火点をなくすことができ、消防法における非危険物としている場合が多く見られます。
非水系の洗浄剤は炭化水素系、アルコール系、シリコーン系に分類されます。
炭化水素系洗浄剤
炭化水素系洗浄剤は油性の汚れに効果的です。成分としては、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ナフテン系の炭化水素がメインです。
炭化水素系の洗浄剤は金属に対する腐食性が少ないこと、また、蒸留することによってリサイクル使用ができ経済的であることが特徴としてあげられます。ただし、引火性があることから、洗浄装置は防爆構造とする必要があります。
アルコール系洗浄剤
アルコール系洗浄剤としては、イソプロピルアルコールとエチルアルコールが代表です。油に対する溶解力はそれほど高くありませんが、水溶性の汚れに対して優れた洗浄力を発揮します。乾燥性がよく、水切り剤としての利用もできますが、引火点が低く、洗浄装置には十分な防爆構造が必要となります。
大分類 | 中分類 | 小分類 |
---|---|---|
水系 | 水 | 純水、脱酸素水、水道水 |
アルカリ系 中性系 酸性系 |
界面活性剤とアルカリビルダーと水 界面活性剤と水 界面活性剤と酸類と水 |
|
準水系 | 準水系 | グリコールエーテルと水 テルペンと界面活性剤と水 シリコーンと界面活性剤 |
非水系 | 炭化水素系 アルコール系 シリコーン系 |
ナフテン、イソパラフィン イソプロピルアルコール、エチルアルコール 低分子ポリジメチルシロキサン |
工業用の洗浄は、被洗浄物の形状や大きさがバラバラであり、最適な洗浄剤の選定はもちろんのこと、目的、清浄度によってさまざまな工夫がなされています。一般的には次のような物理的な手法が取り入れられ、その後、必要によってリンス工程、乾燥工程を経て洗浄工程が完了します。
各産業における洗浄は目標とするレベルの清浄度が得られないと品質上のトラブルとなるため、事前に洗浄装置も含めた洗浄の実験が繰り返し行われています。
超音波洗浄 | 超音波によって生ずるキャビテーション効果や微小振動効果で、被洗浄物の表面に付着している汚れを取り除く方法。 |
---|---|
シャワー洗浄 | ノズルから圧力によって噴出させた液体を被洗浄物に当てて行う洗浄法。 浸せき法や、搖動法に比べて洗浄の効率は良い。 ただし、泡立ちやすい洗浄方法であり、低起泡性の洗浄剤を選択する必要がある。 |
搖動洗浄 | 被洗浄物を液中に浸せきし、上下、左右に揺り動かしながら汚れを取り除く方法 |
浸せき洗浄 | 被洗浄物を洗浄剤に浸して汚れを除去する洗浄法。 洗浄液の溶解力、浸透力を利用して汚れを取る方法 |
噴流洗浄 | 液中に浸せきされた被洗浄物に上下、左右から噴射される洗浄剤の流れで汚れを取る方法 |
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